英語には何語必要か
日本語話者は、英単語をゼロから積むわけではありません。すでに数百語がカタカナとして頭に入っています。問題は、その一部が間違って入っていることです。
カタカナ語は貯金ではなく借金
日本語の語彙の約一割は外来語で、その大半が英語由来です。ドア、テーブル、コンピューター。ここまでは無料の貯金に見えます。ところが、そのうちのかなりの数が日本語の中で意味を変えています。
マンションは英語では豪邸を指します。スマートは賢いという意味で、細いという意味はありません。クレームは主張や請求であって苦情ではありません。ナイーブは素朴で世間知らずという否定的な語です。コンセントは同意を意味します。
知らない単語なら辞書を引きます。ずれたカタカナ語は、知っているつもりのまま口から出ます。相手が困惑してはじめて気づく。だからこの種の語は、他のどの語よりも復習回数が要ります。すでに誤った答えが記憶に入っているぶん、上書きに時間がかかるからです。
何語で英語のどこまで分かるのか
言語学では語彙量をカバー率で測ります。会話や文章に出てくる語のうち、自分が知っている語の割合です。ポール・ネイションの調査が安定した数字を出しています。
| 語族の数 | 話し言葉のカバー率 | できること |
|---|---|---|
| 1,000 | 85% | 身近な話題の簡単なやりとり |
| 3,000 | 95% | 字幕つきのドラマ、穴のある会話 |
| 6,000〜7,000 | 98% | 字幕なしの映画、ラジオ、英語での一日 |
| 8,000〜9,000 | 読解で98% | 小説と新聞が負担なく読める |
95%から98%への一段は見た目より重いです。95%では二、三文に一度知らない語に当たり、それがたいてい意味を担う語です。98%になると穴が十分にまばらになり、文脈が埋めてくれます。教科書は最初の2,000語の中に収まっているので、教科書は読めるのにドラマが分からないという状態が生まれます。
日本語話者がつまずくところ
- 句動詞。get up、put off、look after。部品からは意味が読めません。頻出するものは二百ほどで、一語として覚えるしかありません。
- 短い動詞。頻度の上位を占めるのは get、take、make、keep といった短いゲルマン系の語です。漢語と対応しないので手がかりがありません。
- 母音の数。英語の母音は十以上あります。ship と sheep、bad と bed が一つの音に潰れると、二つの語が記憶の中で一つになります。
英単語は何を一語と数えるのか
英語では run、runs、running、ran、runner をまとめて一つの語族として数えます。日本語には活用による語形変化がこの形で存在しないため、日本語の「単語数」の感覚で数えると、自分の語彙量を多めに見積もることになります。
単語帳を選ぶときにも効いてきます。語形ごとに項目を立てたリストは、go、goes、went、gone に四枠を使い、一つの動詞に四回分の労力を払わせます。語族でまとめてあれば、不規則動詞は一枠で済み、他の形はついてきます。
どの順で覚えるか
英語の頻度曲線は非常に急です。the、be、to、of、and はどこにでも出ますが、辞書の十七万項目の大半はほとんど姿を見せません。上位千語を先に押さえるほうが、無作為の三千語より多くの理解を買えます。
テーマ別のリストが役立つのは、テーマの中でも頻度で絞ってあるときだけです。English Progress の6,000語は実使用の頻度順に並び、テーマごとにまとめてあります。
英単語は一日何語なら続くのか
一日十語なら、学習五分に復習を足して四か月で千語、一年で三千語に届きます。詰まるのは覚える側ではなく忘れる側です。復習の仕組みがなければ、その大半は数週間で消えます。
一日三十語は二週間だけ調子よく見えます。その後に復習量が三倍になり、一回二十分を超えて続かなくなります。今日追加した一語は、これから数か月分の復習を一緒に買っています。そこで効いてくるのが間隔反復です。忘れる直前に復習を置くので、合計が漏れずに積み上がります。